一枚の絵に心を奪われたことをきっかけに絵を描く歓びに目覚め、美術の世界に飛び込んでいく主人公。高二から絵を始めた主人公が芸大を目指し、絵と受験と人生に真正面から向き合う姿を描く物語。

 

「ブルーピリオド」の評価

見てもらいたい度:🎨🎨🎨🎨🎨(ぜひ観て!)

 

オススメ・ポイント

主人公が真剣に真摯に絵と自分自身に向き合う姿、ときに弱気になるけれど、それでも逃げない、卑屈にならない前向きな姿が、観ていて実に気持ち良かったです。美術=文化系のテーマでありながら、スポ根的魅力、面白さを感じます。

妬み、嫌がらせ、足の引っ張り合いを中心としたエピソードは無く、主人公のストーリーをまっすぐドーンと描いている点が好印象でした。ライバル、友人、仲間、先生のキャラそれぞれの役割もそのストーリーにしっかり嵌っています。

絵を描くことについての薀蓄や、表現することや生きることについての考え方が随所に出てくるところにも魅力を感じます。

一般にあまり馴染みのない美大受験や美術系予備校の描写に興味をそそられ、それだけでも十分に観ていける作品です。そしてそれだけでなく、絵を描く魅力に気付き、ハマり、人生の決断をし、真剣な努力と悩み、挑戦と危機と突破を経てクライマックスへと続くストーリーが実に力強く、全12話を通して全くダレることなく、最後までぐいぐい引っぱっていってくれる作品でした。

 

オススメの回

どんなアニメかな?面白いのかい?という方へは、第1話「絵を描く悦びに目覚めてみた」をお薦めします。

全話を通してのお薦めは、第10話 「俺たちの青い色」です。

冬の海へと向かった主人公と友人の龍二が過ごす非日常の時間。約半日の濃い時間の中で、主人公が龍二の心を救い、龍二は主人公に絵についての大きな示唆を与える過程が淡々と描かれます。

お互いの心の整理が出来た二人の表情が実に爽やか。全て無くなってしまうのが怖い主人公と、全てを無くしたい龍二の、海の音への印象の違いも印象的でした。

 

※この後ネタバレあります

 

「ブルーピリオド」を観ての感想

美術部の先生の「好きなことに人生の一番大きなウェイトを置くのって普通のことじゃないでしょうか」という言葉にハッとさせられました。主人公と同じく好きなことをしない言い訳を並べる自分、好きなことに時間を使うことに後ろめたい気持ちを感じる自分に気づき、「そうだよね、好きなことを一番大事にするって当たり前だよね」と、今までそうしてこなかったことが不思議に感じられました。(なので、今思いっきり時間を使ってこれを書いています!)

同じく先生の「絵は文字ではない言語」という言葉も印象的です。この言葉を聞いて、以前読んだことのある「なぜ、これがアートなの?」という本に書いてあった「作品の意味や内容をそのまま言葉に出来るなら、作品を見る必要があるだろうか?」という文章を思い出しました。


私は今まで、絵とは才能と技術だと思っていました。このアニメを観て、絵を描くには才能や技術だけじゃなくて、何を思ったか・感じたか・考えたか・経験したかが大切で、それを言葉じゃなくて絵で表現する、というより、言葉で表現できないことを、あるいはできないからこそ絵に描くんだなと思いました。

原作漫画は、2022年5月段階で単行本12巻まで発行されています。ぜひ完結まで見届けたい作品です。

 

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