怪しげな月

「MARS RED」の評価

舞台は大正時代の東京。軍によるヴァンパイア部隊創設計画と、それに翻弄される人間とヴァンパイアを描きながら、人間らしく生きるとはどういうことかを問うアニメ

見てもらいたい度:❤️❤️❤️❤️🤍

オススメ・ポイント

心情をセリフで説明的に示すようなことはしない、想像を巡らすことで泣けたりぞっとしたりできる、大人向けのアニメです。

小説好きな方ならハマると思います。

オススメの回

「7話 手紙」です。

1話の謎解き回という側面もありますが、私は先に 7話を見ることで 1話からすんなり入っていけるのではないかと思います。
この 7話はその後でもきっともう一回見たくなるでしょうし。

※ネタバレあります

食わず嫌いしなくてよかった!

初回の入りがいきなり芝居がかった語りだったり、登場人物の関係性が全然わからず、「うわ、なんかこれ難しいアニメだ」と感じて、ちょっと苦手かもと思ってました。

前田大佐が死んだバンパイアになぜ花を手向けたのかも、勘の鈍い私には「?」で…
でもその理由も6話でわかり、7話では誰の目にもはっきりと明かされます。

この7話がめちゃめちゃ泣けて、その後に1話を見返すと、最初観たときとは全然違って見えるんです。


あんなに儚く、まるで初めから存在しなかったかのように消え去ってしまうなんて。 そしてその時の、表には出さない前田大佐の心の内。

とっても味わい深いアニメだと思います。

山上さんのキャラがいい

3話、山上さんが幽霊として奥さんと再会する話、とても切なかったです。

山上さんのキャラ、バンパイアになって「俺TUEEE!」じゃなくて、「人間ではなくなってしまった」悲哀が出ててとても好きです。
声も作中で一番かっこいいのでは?

その山上さんが6話で…、私の山上さんが…(泣


中島中将が超怖かったんだけど…

中島中将は高圧的なところもなく、穏やかな優しい人なのだろうと思ってました。
5話でかなり危ない人だというのが顕になりましたが、実は1話の段階で既にヤバイ人という描写はあったんですね。

だって、岬さんのことわかってて前田大佐を行かせたわけでしょう? しかもあんな命令を淡々と伝えたりして。

私は最初の1話視聴時はそれに気付かず、あの優しそうな顔の裏には狂気が隠れてたということが後からわかってゾッとしました。 穏やかでまともで普通の態度でいたことが逆に怖い!


しかし、そんな中島中将もルーファスにころりと騙されて終盤あっさりと失脚。
しかもそのルーファスは前田大佐と栗栖さんに雑魚キャラ扱いで相手にされず、デフロット君に幻覚を見せられて海に落ちるという間抜けな最後。

まあこのルーファス、バンパイアの王になると言ってた割にあまりにも迂闊で考え無し、用意も覚悟も無さ過ぎる。
こんなのに嵌められた中島中将って…

強いけど弱いバンパイアという存在

11話でスワさんが人間とバンパイアの違いを聞かれ、「生きるということに飽きてしまってるかどうか」と言い、さらに人間が他の生き物と違う所は生存以外に「文化を生み出す」ところだという。

「生きるということに飽きている」点ではデフロット君もそうで、芝居の中で仮想の人生を生きることでその「飽き」を解消してたらしい。

バンパイアは力が強くて怪我もすぐ治るし高速移動もできて年も取らない。だけど太陽に焼かれるし、泳げないし、強い匂いにも弱い。個の生物としては弱点を持ちながらもそれを上回る長所により強者として生きていけるでしょう。
しかし、人間社会の中で生きるとしたら、年を取らないということは必ずしもアドバンテージにはならないんですね。

周りの目がある限り、何十年も同じ姿のまま同じところに住み続けることは出来ないし、触れ合った人間もやがて寿命が付きて死んでしまう。現れては消える何人もの人間を見ているうちに、劇で役を演じる役者を見る観客のような気持ちになってしまうのかも。

デフロット君は役者の側となり人間を演じ、スワさんは唄や芝居、踊りなどの人間の文化に触れることで人間を思い出し、そうすることで人間らしい正気を保ち続けた。
それが出来ないバンパイアは5話に出てきた鬼畜マダムのようになってしまう。


人間社会で人間らしく生きていくのはバンパイアにとってとても辛く大変なことで、それを思うと、正気を失いゾンビのように徘徊しているあっちの方が実は生物としての正常なバンパイアなのかもと思えてきます。

デフロット君はなぜ助けたのか?

デフロット君はなぜ岬さんや前田大佐を吸血鬼にしてその命を救ったのでしょう?
そもそも、帝国劇場での事故の際に岬さんを助けようと思えば超速移動で事故を未然に防いで助けられたはずでは?

岬さんや前田大佐はデフロット君にとっては、永く共に生きていきたいと思えた存在だったのか? 13話Cパートのセリフを聞くと二人のその先の話を見てみたい劇の役者に過ぎなかったようにも思えてきます。

前田大佐が見てた夢

13話で岬さんの姿を夢に見る前田大佐。
『お前の墓もあるんだ』『おかしな夢ですね…』と言うなり消えてしまう岬さん。ここの『おかしな夢ですね…』のセリフは素晴らしく、聴いてるだけで涙が出てきそうになります。

夢の中で山上さんと天丼食べてるのは山上さんの最後の言葉『天麩羅、食いてぇなぁ』があったから?

バンパイアになってからずっとこんな夢を見てたんだろうか?

最後に正気に戻り言った『終わらせてくれこの馬鹿げた芝居を』の馬鹿げた芝居とは自身が見ていた夢のことか、周りで起きているバンパイア騒動か、それとも自分の人生のことなのか。

岬さんが逝ったその場所で同じく太陽に焼かれて消えた前田大佐。寄り添うようにスティグマが刻まれた地面が二人の墓標のようでした。
劇中でデフロット君が詠む詩はこの前田大佐と岬さんのことを詠っていたように感じました。

その他ちょっとした話

劇中のサロメ

1話から演劇の「サロメ」が登場しますが、実際にアニメの設定と同じ大正時代に帝国劇場で上演されたそうです。

地下牢から響く預言者ヨカナーンの美しい声、その声に惹かれ恋する王女サロメ。 まるで前田大佐の手紙と、その手紙を読んで恋する岬さんのようだと思いました。

栗栖さんの刀

8話で栗栖さんが金剛鉄兵に刀を抜くところで、「あれ?刃の向きが逆?」と思いました。 鞘から抜刀するシーンで、刃が下を向いてたんですね。
普通刃が上じゃない?と思ったんですが、調べてみると、私が思っていたのは打刀(うちがたな)で、太刀(たち)の場合は刃を下に向けて帯刀するということを知りました。

ついでに、大正時代の軍刀の外見は西洋風のサーベル、中身は片刃の日本刀。 外見も日本刀らしくなったのは昭和になってからということも知りました。

ダニー・ボーイ

9話でルーファスが金剛鉄兵に対して「ダニー・ボーイ」と呼びかけています。
ダニー・ボーイってアイルランド民謡の?


Wikipedia によるとその歌詞は「戦地に赴く息子や孫を送り出す」という解釈もあるようで、ルーファスにとって金剛鉄兵は、戦場に送り出す自分で作り出した子供たちという気持ちなのかもしれません。

13話ではデフロット君がルーファスを「ダニー・ボーイ」と呼ぶのですが、こちらは「私にとってお前など、お前が手駒のように使った金剛鉄兵のようなものだ」という皮肉が込められていたように思いました。

栗栖さんのその後?

13話Cパートでは栗栖のその後だけが描かれませんでしたね。天満屋さんに竹を運んできた車屋さんでさえ描かれてたのに。

「MARS RED」についてさらに知りたい

史上初の朗読劇アニメ

このアニメの原作は朗読劇の舞台作品で、史上初の朗読劇のアニメ化作品なんだとか。
初回のお芝居のセリフを読むところもそういう所から来てるのかな?

原作者の藤沢文翁さんのサイト上の説明によると、”会話のやりとりだけで内容が理解できる台本”、”音楽の生演奏、特殊効果機材、サウンドエフェクト、特殊な照明効果、さらには心理トリック等の特有の技法により「頭の中に突如物語の世界が出現する」”という特徴があるようです。 面白そうですね。

朗読劇では栗栖さんが超高速で動くところとかどう表現してるんだろう? 興味あります。

原作者 藤沢文翁さんの曾祖母さん

原作者 藤沢文翁さんの曾祖母さんは関東大震災を経験された方だそうです。 そのお話しがとても興味深かったのでリンクを載せときます。

お婆ちゃんの昔話 | NEW CROSS STYLE

参考リンク