アニメ「takt op.Destiny (タクトオーパス)」の評価と感想
「takt op.Destiny (タクトオーパス)」の評価
D2 と呼ばれる怪物に対して、音楽の力で戦う「ムジカート」と「コンダクター」。 予期せずムジカートとコンダクターになってしまった主人公たちが、戦いと陰謀に巻き込まれながら、望む世界を実現するため、共に進んでいく姿を描く物語。
見てもらいたい度:🎵🎵🎵🎵➖ (4/5)
オススメ・ポイント
音楽をテーマにした物語で、様々な人の音楽への想いや情熱が感じられるエピソードが随所に散りばめられています。 主役はもちろん、端役も含めた登場人物それぞれに魅力があり、個々のエピソードで印象に残る表情や行動、言葉を残していきます。
60年代、70年代のアメリカを感じさせる、レトロでノスタルジックな雰囲気を持った風景や人物の描写が素敵でした。 そして、その中で繰り広げられる戦いのシーンはスリリングで美しく、切れ味の鋭い動きで迫力があります。 攻撃の手段も、砲撃、銃撃、剣撃、拳撃と多彩、動きもシチュエーションもワンパターンとは無縁で、飽きることがありません。
本作の柱となる設定の「ムジカート」のキャラも個性豊かで、それぞれがとても魅力的です。 天国と地獄は、非情さと話が通じなさそうな点が怖ろしく、ワルキューレは不器用なところが憎めず、タイタンはそのパートナーとの絆の物語に涙せずにはいられません。 それぞれのムジカートの物語も、個別に単体で観てみたいと思わせます。
オススメの回
第一話「指揮-Creed-」です。
この第一話を観ればその後の視聴は決定してしまう、インパクト抜群の回です。
最初はコミカル路線で入りながら、最後にタクトの決死の表情と、コゼットの出てくる回想のカットを見せ、これがただ面白いだけのアニメではないことが示されます。
タクトが廃工場で弾く「悲愴」のピアノも美しく、なぜこの曲だったのかも後々の感動の伏線になっている、実に素晴らしい演出でした。
【注意:この後ネタバレしまくりです】
「takt op.Destiny (タクトオーパス)」の感想
愛・悲劇・情熱
第二話「音楽-Reincarnation-」で、コゼットのタクトへの愛、アンナさんのタクトとコゼット二人への愛、タクトの音楽への情熱が丁寧に描かれ、その愛情に包まれた平穏な生活に、観ているこちらは気持ちよく惹き込まれていきます。 それだけに、その後に起きる悲劇に大きなショックを感じ、皆の気持ちにお構いなしにその世界が破壊されてしまったことへの怒りや悲しさが、強烈に迫ってきます。
一話と二話で一つの物語として完成しており、これだけで短編として発表できる強度があると思いました。その後がダメだったという意味ではなく、この2つのエピソードには見るべきところ、感じるところが十分すぎるほど詰まっています。
タクトの心の内
主人公のタクトは、誰にも迎合せず、屈することのない心の強さを持っているところが魅力です。 自分の気持ちに正直で、かといって他人に何かを押し付けることはありません。 そして、最初から最後まで全く素直じゃない。 それもあって、タクトのコゼットへの気持ちは、あからさまにはっきりと描かれることはありません。
でも、そこがいいんですよね。 第六話「朝陽-Rooster-」で、ピアノを弾いてる後ろにコゼットの影を感じるところとか、第八話「運命-Cosette-」でのタクトがうわ言で言う『そこに居たのか…』とか、一話で弾いた「悲愴」とかに、その気持ちはしっかりと感じられました。
コゼットの身に起きたことは悲しい出来事だけれど、タクトが一切弱さを見せず、その想いを心の内に秘めているところが、悲劇を安っぽくせず、その悲しさをより一層深く感じさせてくれます。
レニー師匠
強くて優しくて、オネエ言葉なレニー師匠は、魅力に溢れた脇役の筆頭。 義理堅く、正義感が強く、組織の中で一匹狼的立ち位置にいるところもカッコいいです。
相棒のムジカート、タイタンたんとの絆も丹念に描かれていて、第十話「師弟-Lenny-」で見せた二人の約束は、このアニメのハイライトの一つです。 レニー師匠が亡くなってからはタイタンたんのキャラも変わってしまい、それまで見せていた明るさと無邪気さの裏にあったであろう覚悟や悲壮感を思わずにいられませんでした。
もっともっと知りたくなる魅力を持つこのコンビ、レニー師匠とタイタンたんを主役としたストーリーも観てみたいです。
敵役の説得力
ニューヨーク・シンフォニカのトップであるザーガンが本作の敵役なのです。 このアニメで個人的に残念に感じたのが、この敵役の策謀や決意に説得力が感じられなかった点です。
彼が世界を救おうと決意した経緯の描写はあるのですが、それを観ても私にはなぜそう決意したのかが分かりませんでした。また、彼の行動は理由と目的がよく分からず、敵役としての怖さも憎さも哀しさも感じられませんでした。そのため、彼に尽くしてきたムジカートの天国と地獄や、彼を命を削りながら止めに来たタクトと運命たちの行動も霞んでしまいます。
オープニングとエンディング
コゼットと運命、それとタクトをメインに、アニメのあらすじを描くオープニングは、主題歌のドラマチックな展開と、歌詞や絵、動きとのシンクロ具合が素晴らしく、何度も繰り返し観てしまうほどです。 元気なコゼットの姿から始まるこのオープニングアニメは、これだけで一つの物語ですね。
エンディングは誰かの夢なのか願望なのか、はたまた幸せだった頃の思い出か、第七話まではそのような絵でしたが、第八話からはコゼットが運命に変わり、アンナさんも吹っ切れたような表情になったりと、本編の内容と合わせたような変化になっていて、泣かせる演出がいっぱいなのです。
アニメのほぼ全てを語っているような、このオープニングとエンディングがとても好きです。
運命
いわゆる「天然」なところがあり、タクトと似て強情で意地っ張りな性格の運命。 最初は機械人形的だった性格も、物語が進むにつれて人間味がどんどん増してきます。 第八話「運命-Cosette-」でタクトやアンナさんに「運命」と呼ばれたときの反応などには、あまり表に出さない心の内が見えて、キャラクターとしての魅力に厚みを感じました。
最終話「託人-Hope-」では、拳で語る運命のアツさにシビレました。 肉弾戦の中でのセリフが拳の一撃一撃とともに説得力を増し、運命の真っ直ぐな気持ちがストレートに刻み込まれました。
最後までタクトと言い合いをし、憎まれ口をたたきながら、最後に見せた泣き顔…。運命、ほんとうに強情っぱりなんだから。
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