「かげきしょうじょ!!」の評価と感想:青春の傷と挫折の克服アニメ
「かげきしょうじょ!!」の評価
未来のスターを養成する「紅華歌劇音楽学校」に入学した主人公たちの夢と努力、悩みと成長を描く、清々しくも熱い青春物語。
見てもらいたい度:🌟🌟🌟🌟🌟 (満点!)
オススメ・ポイント
物語の見せ方、語り口が抜群
特に斬新なストーリーでもなければ、設定が奇抜なわけでもないのに、物語の見せ方が抜群に巧く、印象的なシーンやセリフ、キャラの表情なども相まって、物語の世界にぐいぐい惹き込まれました。
スターを養成するための学校という舞台からして、必然的に悲劇のストーリーになります。いくら努力しても夢を叶えられるのはひとにぎり、華やかさとともに残酷さもある厳しい世界…。その中で、登場人物一人ひとりが持っている夢やそれに対する想い・情熱、過去に受けた傷やコンプレックス、背負う歴史やしがらみの重さなど、様々な心の要素が、ときに切なく、ときにユーモラスに描かれます。
それは、歌劇に興味がある/なしに関係なく、青春ドラマ、人間ドラマとして、最初から最後まで間違いなく楽しめるものでした。
キャラの魅力
主人公の一人「渡辺さらさ」は、天真爛漫で、真っ直ぐで、豪快で、親切な、人間的魅力にあふれたキャラです。
もう一人の主人公「奈良田 愛」は、スレているように見えて、実は純真でめちゃめちゃ良い子。その愛がさらさの影響を受けて徐々に変わっていく姿を見ていると、自分も愛の視点でさらさの魅力を追体験しているような気持ちになりました。
さらさや愛を含めた主要キャラそれぞれが、良い面だけでなく、弱いところ、心の黒い部分までも見せながら、懸命に真摯に努力していくところが描かれて、どのキャラもみんな好きになって応援したくなってしまいます。
最終話まで見終わって、「なんだかまだ見足りないな」という気持ちでした。それは物足りなかったというのではなく、もっとこの子たちを見ていたい、もっともっと成長するところを見せてほしい、という感覚でした。
音楽もおすすめ
劇中歌やエンディングテーマも素敵です。
【試聴動画】TVアニメ「かげきしょうじょ!!」音楽集
エンディングテーマはキャラ別に3種類用意され、同じメロディで歌詞違いの3曲となっています。歌詞はそれぞれのキャラを思い起こさせるものになっていて、聴き応えがあります。
オススメの回
第五幕「選ばれし乙女」です。
愛に訪れる気持ちの変化と、声楽の先生の情熱と優しさが味わえる、1幕で2度おいしいエピソードです。コミカルな面も、感動する場面も、沢山詰まっている回でした。
※このあとネタバレあります。
「かげきしょうじょ!!」のネタバレあり感想
主役の二人
幼くして挫折したさらさ、幼い頃に心に傷を負った愛、それぞれただのカワイイ、スゴイキャラじゃないところが魅力的です。
私の、さらさの一番印象に残ってる表情は、妬みの感情を口にしておじいさんに怒られたときの子供の頃の泣き顔でした。さらさの天真爛漫で明るい性格の裏に、決して叶うことのない夢への想いがあり、まったくそうは見えないけれど、実は嫉妬、妬みの感情もあったというところに人間的味を感じます。
愛は無表情で不器用だけど、第三幕「クマのぬいぐるみ」で、望まずそうなってしまったわけが明かされ、続く第四幕「涙の上書き」でその無表情の下に隠された優しさや苦しみが描かれ、この2話で愛の人間的魅力が爆上がりしました。
第一幕「桜舞い散る木の下で」で、元アイドルのスター相手に自分の写真を撮ってくれというさらさに、『なんで?』と戸惑いながら何枚も撮ってあげるお人好しなとことか、友達とはこうあるべしと行動するちょっとズレたとことか、『さらさ』と下の名前で呼びたいと何度もトライするけど全然呼べなかったりする不格好なとことか、さらさの誕生日にプレゼントを一所懸命に考えるいじらしいとことかも描かれ、本当に大好きなキャラになりました。
何事にも冷めていた愛が、さらさの影響を受けて熱を帯びてくる様が、このアニメの見どころの一つでした。
脇役も魅力的
委員長や薫を見ていると、「やくならマグカップも」の十子先輩を思い出します。努力家で情熱もあって、血筋もよくて、でも天才に勝てない。まさに最終話で委員長がモーツァルトとサリエリを例にそのことを話しました。このタイプの子、応援したくなるんです。
特に薫の、気が強く見えて、でもそれは名門の家系からくるプレッシャーだったり、プロを目指す本気の情熱からくるもので、その心の内を思うと、実にいじらしく感じて応援したくなってしまいます。
第八幕「薫の夏」は、最後の受験資格の年の薫の揺れる心を描いた素晴らしいエピソードでした。花火の後の『私は自分の意志で決めたの!』というセリフは、自分で自分に言い聞かせているようにも聞こえ、この回のエンディングテーマを歌う薫の凛々しい表情、歌声からは決意がにじみ出ているようで、一気に薫ファン、いえ、薫様ファン、星野 薫様・ラブ!になりました。
薫様は、あの夏の経験が活きて、紅華に合格できたのかもしれませんね。
TVアニメ「かげきしょうじょ!!」ノンテロップED | 星野 薫「薔薇と私」
第五幕「選ばれし乙女」では山田さんの弱いところ、第九幕「ふたりのジュリエット」では双子ちゃんの黒い面が見られ、それぞれがそれらをちゃんと克服していく様がとても爽やかで、清々しく感じました。
第五幕での小野寺先生の励ましや、第四幕「涙の上書き」でのキモオタさんの「開国」の話を見て、教師やアイドル、そして歌劇スターって、人の心を動かす尊い職業だなと感じました。お金や体の健康も大切だけど、人って結局心がダメだと何もできませんもの。その心を開く、奮い立たせる、癒やす仕事って尊い職業だなと。それはアニメも、漫画もそうですね。
絶対2期ほしい
オーディションのときに先生方がおっしゃった言葉を借りると、全編がまさに「青春の輝き」でした。皆の本科でのエピソードも見たいし、日常のエピソードとかももっと見たいです。
これは絶対2期あるでしょう。ありますよね?あって!
「かげきしょうじょ!!」原作漫画などの関連リンク
- 原作漫画「かげきしょうじょ!!」 | 白泉社
- 漫画原作者 斉木久美子さん|MELODY[メロディ]|白泉社 作品サイト
- Wikipedia:かげきしょうじょ!!
- TVアニメ「かげきしょうじょ!!」公式サイト