コンサートのステージ

「Vivy -Fluorite Eye’s Song-」の評価

100年後に起こるAIと人類の戦争を防ぐため、AIであるヴィヴィとマツモトが時に協力し時に反発しあいながら一緒に歴史を変えていく、いわゆるタイムリープ物。

見てもらいたい度:❤️❤️❤️❤️❤️


オススメ・ポイント

100年間という時間的に大きなスケール、緻密で綺麗な絵、魅力的なキャラクター。 話数が進むにつれてどんどん面白くなるストーリーにどんどん惹き込まれていきます。
アクションシーンの動きも素晴らしく、格闘シーンはキャラの動きだけじゃなくカメラワークもとても良かったです。

AIはそれぞれただ一つの使命を与えられていて、それがAIにとっての唯一の拠り所という設定で、この"使命"を巡る様々なドラマを通して、AIとは?人間とは?といろいろ考えさせてくれます。

たぶん、あと何周してもその度に新たな発見をしながら楽しめるアニメです。

オススメの回

難しいけど、とりあえず1話だけ見てみたいなら「4話 Ensemble for Polaris」かなあ。
このアニメで最高に素晴らしいのは5話から9話なのですが、ここを先に見ちゃうとネタバレになっちゃうというか、順番に見ていったときに得られる驚きが無くなっちゃうので。


※この先【ネタバレしまくり】です。

 

ヴィヴィのキャラ

1、2話でアイドルポーズのキメッ!を真面目にやってるのが可笑し可愛い。


最初はいかにも機械という雰囲気があったけど、回を追うごとに人間的な性格というものが備わってくるように見えます。
それぞれのエピソードの間に10年、20年ぐらいの時間経過があり、アミューズメントパークのステージで段々と人気が出てきてるのは、その"性格"が備わってきたことが関係してるのかも。自室も綺麗な部屋に変わっていってるようだけど、AIも人気が出ると待遇がよくなるのかな?

「歌でみんなを幸せにすること」という自身に課せられた使命に常に真摯に向かい合う姿勢が人間で言えば真面目。 2話で『いつまで稼働するかではなく、どう稼働しつづけるか、使命に対して純粋に』と言っていますが、これを最終話の最後まで貫いていました。 このひたむきさはヴィヴィの大きな魅力だと思います。

7話で登場したヴィヴィの別人格(別AI格?)の指パッチン・ネアカディーヴァ。
「うわ〜、別人になっちゃった…」とちょっとがっかりしましたが、見ているうちに根のヴィヴィらしさ(真っすぐで頑固でちょっと不器用)が見えてきて段々と好きになり、マツモトとの共闘段階では完全に感情移入。「ネアカディーヴァ、大好き!」となった途端に消えてしまう…
ネアカディーヴァ、もう一度会いたいです。

最終話最後の短髪ヴィヴィは、純真無垢な笑顔が新人歌手のようです。今度は「歌でみんなを幸せにする」使命をヴィヴィ自身も幸せに全うしてほしいなと思いました。

ヴィヴィは表向きは歌手、裏では歴史改変のエージェントみたいなスパイ物っぽい面もあって、それぞれでの服装や髪型のバリエーションが豊富に見れて素敵でした。

あと、シリアスなシーンで見せるヴィヴィの瞳がとても美しかったです。

 

感じたことを年表に沿って

2061年(1,2話)

未来から転送されたマツモトとの出会い。

マツモトの協力要請を「使命に反しなければ」の条件付きで受けるヴィヴィ。ここでもヴィヴィの使命へのこだわりが見えますね。

未来からの転送の描写が薄くて、個人的にはもうちょっとSF色が濃いほうが好みだったかな。
2話でマツモトとヴィヴィが握手した次の瞬間、マツモトがヴィヴィをぶち壊す勢いで戦っていて、このシーンには「これこれ、AIだったらこうでなくっちゃ」とSF感を感じてワクワクしました。

 

相川議員を救って歴史改変、同時にトァク垣谷も救う

この時点ではこの垣谷が物語のキーパーソンの一人になるとは思いませんでした。
もしかしたらここで垣谷を救ったことがシンギュラリティ計画の失敗に繋がったということも? トァクの過激派をここで潰しておけば…

 

2076年(3,4話)

宇宙ホテルサンライズの落下を防いで歴史改変、 エステラ、エリザベスの姉妹AIとの出会い

心を込めるとはどういうことかというヴィヴィの問いに対して「お客様に笑顔になってほしいと願うこと」と答えるエステラ。ヴィヴィはよく他のAIに「心を込めるとはどういうことか?」と尋ねますが、これがAIと人間との戦争を止めるための鍵になりそうな気がしていました。

エリザベスは廃棄されていたところで、トァク垣谷に「垣谷を守る」という使命を与えられました。 人間でいう”拾ってもらった”的な感覚があるんでしょうか、エリザベスの使命を全うするという意思はとても強く、激しいものだったように感じました。

その使命を巡ってヴィヴィとエリザベスは格闘になるんですが、この戦闘シーンのスピード感と迫力がすごい!そして美しい! ここは巻き戻して何度も観てしまいました。


ヴィヴィは元来歌を歌うためのAIですが、戦闘用プログラムをインストールして戦います。
戦闘スキルをサクッとインストールしてすぐに戦えるようになるとか便利ですね。 異世界転生してチートスキルを得られるとかと同様、瞬時に努力なしに技能を得られるというのは現実じゃありえないんだけど、こういうのあったらいいのになぁと思っちゃいます。

戦闘中にエリザベスがヴィヴィに向かって『お前なんか電卓にしてやる!』と言うのは面白いですね。 どうやらAIにとって電卓は忌むべき存在のようですが、どういう点をもってそう「定義」しているのか、電卓になるということはAIにとって「恐怖」なのか「屈辱」なのか、なんていろいろ想像が膨らみます。

ヴィヴィ、エステラ、エリザベス、それにマツモトも、それぞれ異なる性格や個性がはっきりと感じられます。 技術が進歩するときっとそういうことになるんでしょうね。

AIは使命に生きる、使命が全て、でもこの個性があるがゆえに使命を巡って悩んだり葛藤したりしてしまうんでしょうか。
これが人間の場合だと、例えば”夢”とか”信念”のために悩み、どうにもならなくなったら夢を諦めるとか信念を曲げるとかできるけど、AIにとって使命は絶対、唯一無二のもの…。 それってとっても苦しいことなのでは?

 

2081年(5,6話)

メタルフロート島の機能を停止させて歴史改変

メタルフロートを停止させ、自分も停止しちゃった…
このアニメにぐぐっと惹き込まれたエピソードです。

マツモトの『あなたにはこれが歌に聴こえるんですか?』という問いや、それに対するヴィヴィの答え、冴木博士の『僕にとっては、君の歌がグレイスだった』の言葉の意味も未だにうまく消化できていません。

メタルフロート島の機能停止のために、ヴィヴィがあんな非情な決断をするとは思わなかったです。 島で働く作業用AIが「サプライズ」をした理由がわかって情がわき、島を停止させるのではなくてなんとかして救う方向にいくのかなと思ってました。
5話冒頭で『未来で戦争が起きたら使命に生きたエステラとエリザベスに申し訳ない』といっていたけど、それもあってのことだったのでしょうか。

あの非情な決断からの目的地への疾走シーンでアレンジ違いの主題歌流れるのずるい! カッコ良すぎる! 機械の体だからアクションも無茶でド派手です!


そして、またしても垣谷! そんな都合よく何回も遭遇するかいな! 運命の相手ですか!

グレイスの最後は、表情は微笑んでいるようでもあり、頬をつたう青い液体(AIの血)が涙のようでもありました。

冴木が自死し、自身の右手に付いたグレイスの青い血、左手に付いた冴木の赤い血を見て機能停止するヴィヴィ。 血を見ると貧血で倒れちゃうタイプだったのね。

 

冴木タツヤ、グレイスとの出会い

史上初の人間とAIとの結婚、ここに至る前に時代的にはいわゆる「俺の嫁」的なものも普通に認められていたのでしょうか?


人間とAIとの結婚が認められるなら人間と2次元キャラとの結婚も認められる?
2次元キャラには自律的AIのような判断能力が無くて、人間を愛するということもないから認められない? 2次元キャラとの関係は単なる人間側の想像であり、「キャラが私を愛してくれている」という事実は無いのだからダメ?

でも、冴木博士とグレイスの相思相愛の関係はどうなのでしょう?
グレイスというAIが冴木博士を「愛している」のは演算の結果であり、「グレイスは私を愛してくれている」というのは冴木博士の感覚、もっと言えば想像なのでは?
人間とAIの"愛"と人間と2次元キャラとの"愛"の境界はどこなんでしょう?

 

2121年(7,8,9話)

オフィーリアの自死を阻止して歴史改変

5,6話に続いて消化が追いつかないヘビーなエピソード。もう私のお腹はピーピーです。

 

大御所 指パッチン・ネアカディーヴァ師匠

7話でヴィヴィがメインステージに立ってる! 大人気じゃん! キャリア60年!キャラまで変わった!? と思ったら、6話のショッキングな最後でフリーズし、記憶も無くして別人格(AI格)になってしまってた。

『電卓にされたい?』ギャグ出た!大御所が言いそう。
エイッとほっぺたを手で挟んでスタッフを笑顔にするのは、3話でエステラがヴィヴィにやってたやつ。断片的に記憶が残ってるってことでしょうか。
やけに指パッチンをするのは何か意味があるのかな?

驚いたのが8話にてオフィーリアに対して『もっと心をこめて』と言い、ヴィヴィがあんなに悩んでいた「心を込めるとはどういうことか?」を『随分初歩的な悩みね』と言ってのけたこと。 大御所は「心を込める」を完全に理解してたようです。
と、いうことは、大御所の人格が消えずにそのまま2161年を迎えていたらまた別の結末になっていたのかも…

 

オフィーリアとアントニオ

ウマ娘とのコラボでライスシャワーがゲスト出演。


オフィーリアとアントニオの関係は私には親子の関係のように感じられました。
オフィーリアは親に認めてもらいたい子供で、アントニオは自分の夢を子供に託した親。

オフィーリアは自分の歌でアントニオに喜んで欲しい、アントニオはオフィーリアに自分のためだけに歌って欲しいという、それぞれ本来の使命とは違う欲求を持つようになり、そこからおかしくなってしまったのか?。

AIが使命以外の目的、欲求を持つといえばヴィヴィもそうだし、垣谷のピアノの先生もそうだった。だけどこちらは本来の使命、例えばヴィヴィの「歌でみんなを幸せにする」という使命のその先に「歌を聴いてもらわないといけない」→「生きていて欲しい」→「戦争、ダメゼッタイ!!」→「シンギュラリティ計画を遂行する!」という具合に繋がっているから問題なかったのかな?

 

AI垣谷

AI垣谷との戦いの場面の作画、アクションはもちろん、宙を舞う雪の描写とかもすごい。


人からAIになる技術があるってことは、この時代では世界中で相当な数の人が既にAIになってるんでしょう。 それが出来るんなら人類抹殺なんてしないで、人類総AI化すればよかったんじゃ?
でも、AIになった時点でもう「人」ではないのなら、それは抹殺と同じことか?
AI垣谷はディーヴァに向かって『AI が人を理解しようとするな』と叫んだけど、AIになって"人"を語るのか、この人は? ここで語っている垣谷は”人"なのだろうか?

垣谷は一体何を知りたがっていたんだろう?
8話Cパートで、垣谷のピアノの先生だったAIが「私の使命はピアノで人を幸せにすること、そのために垣谷には生きていて欲しい」と言い残して事故で死んだ(破壊された)。 そして6話でヴィヴィに「歌で人を幸せにするという使命ゆえに垣谷には生きていてほしい」と、先生と同様のことを言われた。
これが垣谷がAIになってでも知りたかったことに繋がるんだけど、知りたかったのはヴィヴィやピアノの先生が自分の命を助けたのは単なる使命からか、あるいは「気持ち」「心」というものがそこにあったのか、ということなのかな?
それなら、元人間でAIとなった自分こそがその答えを出せそうな立場だけど…。

AI垣谷が言う「天の啓示」というのはアーカイブからのコンタクト?
デーヴァに撃ち込んだ未知のコンピュータ・ウィルスもアーカイブから渡されたものなんだろうけど、これがあったから最終話のマツモト開発の対アーカイブ用ウィルスが生まれたんだよね。歴史修正合戦ですね。

 

マツモトとディーヴァの共闘

8話でディーヴァから「計画に不必要になったなら、なぜ私を助けた?」と問われて口ごもるマツモト。 本エピソードでのマツモトはディーヴァの口撃にタジタジで、随所で調子がくるってる様子が見られます。

無理して独りでシンギュラリティ計画を遂行しようとしてたけど、ディーヴァと共闘する前に語ったマツモトの使命「パートナーと共にシンギュラリティ計画に殉じること」、これが本心なんですよね。

ディーヴァとの共闘で本来の使命を遂行できると吹っ切れた感があの「ヒーハー!」なのだ!

 

AIの自死(自壊)

このアニメの結末までを見ると、史上初めて自死したAIはヴィヴィということになるのかな。
「心を込める」とは「命をかける」ということなのかも。

 

2126年から2146年(10話)

ヴィヴィ博物館入り、暇にまかせて作曲を始める


「心を込める」がさっぱりわからず歌えなくなってしまったヴィヴィは引退して博物館入り。
自分で作った歌なら歌えるかもと作曲を始め、完成までに20年かかる。根気があるなんてレベルじゃない。
博物館で仲良くなったオサム君も成人して結婚して子供までできちゃったよ。

オサム君、『ディーヴァの歌を目の前で聴きたかった』と言ってたけど、その希望はとうとう最後まで(2回目の最後も)叶えられなかったんだね…
10話の最後でオサム君が誰かに『マツモトさん』と呼ばれて、ああ、この人があの松本博士なのかと分からせる演出うまい。そして、これがこの回のサプライズかと思ってたところに衝撃のCパートで戦争勃発!

 

2161年(11,12,13話)

人間とAIの戦争勃発

人間に戦争をしかけたのは、ずっと身近にある存在だったあのAI集合データベース「アーカイブ」!

人類の発展という使命のためには人類を滅ぼし、AIが人類に成り代わるべきという結論に達したとアーカイブは言うけれど、同時にヴィヴィたちが歴史を改変する度にアーカイブは元の歴史へと修正を加えていってたって、ということはアーカイブは100年前から人類殺る気マンマンだったってことじゃないの?

ヴィヴィが自らの意思で作曲を行ったことに可能性を見出し、『あなたに未来の一つを委ねることにします』と言って、今の人類を救う価値があるとヴィヴィが判断するならそれを尊重するというアーカイブ。
それ言うなら人類抹殺始める前に言ってよね。ヴィヴィが作曲したのって何年も前の話しじゃん! ヴィヴィ寝てたから起こすの悪いと思って、てか?

 

シンギュラリティ計画完遂

2周目のタイムリープでシンギュラリティ計画完遂。
「歌でみんなを幸せにする」という使命のため歌で人類を救い、自らを葬ったヴィヴィ。

 

短髪ヴィヴィ

短髪ヴィヴィは何も知らない様子。話しかけるマツモトの声がやさしい。
無邪気な笑顔を浮かべて期待に満ちた瞳をキラキラとさせる短髪ヴィヴィにうるっときて、100年間の苦労話なんか知らなくていいから幸せになるんだよ、と言いたくなってしまいました。
同時に、つらい思いばかりをさせたあのヴィヴィはもう帰ってこないんだなと思うと、もう…


この短髪ヴィヴィはいわゆるヴィヴィのシスターなのか? あるいは戦争を終わらせた英雄として永く語られることとなったヴィヴィとマツモトを後の人類が復元、あるいは創作したものなのか? それとも生き残ったマツモトが作り上げたものか?マツモトはシンギュラリティ計画のことは忘れて「歌でみんなを幸せにする」という使命だけに生きて欲しいと、わざと記憶を戻さなかったのか?

もしかしたら別の世界線の話で、あんまり大きな苦労もなしにシンギュラリティ計画終わっちゃった世界線だったり、松本博士からタイムリープの手順を密かに伝授されていたマツモトが今度こそはヴィヴィも幸せになるという結末を求めて仕掛けた三度目のシンギュラリティ計画の始まりだったりして。
だって、マツモトの使命は「パートナーと共にシンギュラリティ計画に殉じること」でしょう?

果たして、短髪ヴィヴィが窓から眺めた人影は"人類"だったのでしょうか? と、そんなことも考えてしまいます。

 

結論として、2クールで見たかった

5話から9話までが大傑作すぎるんです。10話以降も決して悪くないのだけれど、その前までと比べるともっと深く、濃いものであってほしかった。
でも、そのためには話数が足りない!

11話で明らかになるアーカイブの人類抹殺の理由は短絡的で浅い印象を受けてしまいました。
でも、その結論に至るまでのアーカイブ側の描写が無いからそう感じるだけで、アーカイブはアーカイブで世界中のAIの100年以上にわたる記憶と与えられた使命との解釈で長く苦しい葛藤があったのかもしれず、アーカイブ側から見たこの100年を知れば人類抹殺の理由もまた違った印象になったかもしれません。
その意味でも話数が足りない!

絵も美しく、キャラも魅力的、ストーリーの題材も各エピソードもとても興味深いアニメ。
「これはこういう意味です」「こういう結論です」と明白な提示はせず、こちらにいろいろと考える余裕、解釈の余白が残してあるのもいい。

もっと長尺で、せめて2クールものとして見たかったアニメでした。

 

「Vivy -Fluorite Eye’s Song-」についてさらに知りたい

参考リンク


 

Blu-ray など