「ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~」の評価と感想

農奴もヘルなら貴族もヘル。
気付けばこの世界そのものがヘルだった。

本記事は作品の優劣を論じるものではなく、あくまで私個人の「好き嫌い」に基づいた単なる意見表明に過ぎません。
価値観は人それぞれ。もし私の感想の中に、少しでも共感してもらえるポイントがあったら嬉しく思います。

 

「ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~」の評価

【見てもらいたい度:👦👦👦👦➖(4/5)】

 

オススメ・ポイント

  1. 主人公の成長に沿った人生のドラマが観られる。
    • 農奴編、貴族編それぞれで、家族の暖かさや仲間思いの心が丁寧に描かれている。
    • 子の出世を泣いて喜ぶ父親の姿を見て『これは断れないな…』と思うなど、共感できることで感動が倍になるシーンが多々。
    • 父ちゃんの大怪我や貴族の死など、命に重さがある。
  2. 情報不足の中で試行錯誤を重ねて攻略していく展開の面白さ
    • タイトルと違って無双しない。ゲーム知識と手持ちの札を駆使して繰り広げる限界ギリギリの戦いにスリルあり。
    • この世界で生きるために前世でのゲーム知識を活かす設定が最初から最後まで一貫している。
  3. 一途で真剣に生きる子供役を演じたら右に出る者はいない、コミカルもシリアスもいける田村睦心さんの演技。

 

オススメの回

第3話「事件」です。

これまでの"のんびり"モードから一変、農奴の立場の厳しさ、農奴仲間の絆の強さが描かれる回でした。
この世界がゲームだとは思っていなかったものの、どこかゲーム感覚で生きてはいたのでしょう。それが、衝撃の事件をきっかけに、何のために強くなるのか、ゲームとは違う目的意識が主人公に芽生えます。

その事件の裏話が明かされる、第4話「アレンの告白」での人情味あるエピソードも感動的でした。

この後、話数が進むにつれて主人公と同じ目線で世界が拡がっていき、物語の魅力もどんどんと増していきます。第11話「襲撃」でのお嬢様に寄り添う主人公の優しさなど、終盤はもうオススメシーンだらけです。

 

残念ポイント

決してつまらないわけではないのですが、個人的に正直 2話目までは「綺麗なお母さんが豹変して素足でバッタを踏んづけるシーン」が印象に残るのみでした。後半に向けて加速度的に面白くなっていくので、最初のスロー・スタートがもったいなく感じます

廃ゲーマー視点の思考が見せ場の一つであるため、ゲーム・システムの解説が詳細になされます。
しかし、セリフでの説明が多いせいか、ゲーム素人の私には情報の渦に飲み込まれそうに感じることもありました。せっかくのアニメなので、もっと絵で上手く解説してもらえると、助かったかもしれません。

 

思い付くまま、褒めの断片

第6話「旅立ち」: 同季の「魔術師クノン」でのトリッキーな展開と違って、本作のお別れエピソードは正統派。
ずっと一緒に鍛え合ってきた"剣聖幼馴染"との最後の勝負を、引き分けで終わらせるのも粋。

そして、旅立つ主人公を見送る両親、村の境の門が閉じる刹那、お母さんが感極まって両手で顔を覆う姿が一瞬だけ見えて門が閉まってしまう。大きな感情の余韻が残るシーンで、とても好きです。

第7話「グランヴェル家での日々」: 生きる環境が変わって新章の開始。
まずは新環境の説明をエピソードの中に散りばめながら自然と見せる巧さ。

第9話「マーダーガルシュ」: お嬢様が全然デレないけれど、少しずつ信頼関係が築けていて親密さが増し、段々と可愛く見えてくる匙加減が絶妙。

最初はストーリー内容と違和感のあったエンディング曲が、後半に進むにつれて段々と似合ってくる感覚が新鮮だった。

 

第1期 ベスト・オブ・召喚獣

アゲハです。
「コナコナコナ〜」が耳から離れません。😆

 

パロディ小説: こんな「ヘルモード」は嫌だ

【ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無視される~】

アレンが生まれた日、鑑定士のロカは結果を三度見した。

「ロダンさん。この子のステータス、全項目が史上最低値です。成長補正もマイナス。これは前例がない」

「そうか」

「いや、そうか、じゃなくて」

「ロカさん、お茶どうぞ」

テレシアが割り込んだ。ロカは湯呑みを受け取りながら続けた。

「ただ、この目を見てください。生後三日でこの目は——」

「かわいいでしょう」テレシアは満足そうに頷いた。「私もロダンもそう思って」

「そういう話ではなく——」

「ロダン、ロカさんもかわいいって言ってくれてるわ」

「……その目が ……そうか」

ロダンは上の空だった。アレンの黒目黒髪を見ていた。自分の茶髪とテレシアの緑の瞳を交互に思い浮かべながら。

ロカは湯呑みを置いて帰った。

当のアレンは天井を見ながらステータス値を確認している。ヘルモードは自分で選んだ。全ステータス最低値も想定内、むしろ燃える。最適な攻略ルートを組んで、最低値からのスタートダッシュを決めてやる!そのためには、使えるリソースを最大限活用しなければ。

(まずは、食事だ)


翌朝、テレシアが離乳食を差し出した。

アレンは食べながら、真剣な目で母親を見上げた。

「ンー、ンンー」

「あら、何? おかわり?」

違う。もっと肉を、という要求だった。筋力の初期値が壊滅的なため、食事による成長ボーナスを最大化する必要がある。穀物より動物性タンパク質を獲得したい。

「ンー!」

「よく食べる子ねえ! ロダン、アレンがおかわりだって」

「……そうか、よく食べるとこは俺と同じか……」

おかわりで出てきたのは、同じおかゆ。アレンの要望は無視された。

(仕方ない、リソースの質が低いなら、スタック数でカバーするしかない)

アレンは黙って食べた。もう一杯おかわりした。


三ヶ月後、アレンはロカが来るのを待っていた。

この男だけは、自分のステータスを正確に読める。ただのNPCではないはずだ。

(まずは検証だ)

ロカが座るなり、アレンは真剣な眼差しで見つめた。

「——!」

ロカは息をのんだ。「な、なんですか、その目は」

「——!!」

「何かを要求していますね? えーと、スキル取得のために、何か必要なものが——」

「ロカさん! アレン、今日初めて寝返りを打ったんですよ!」

テレシアが飛び込んできた。

「それはおめでとうございます。ただ、今アレン君と大事な——」

「早くないですか? 普通の子よりずっと早い気がして」

「まあ、早いというか、このステータスでこの成長速度は普通は——」

「ねえ、ロカさん、うちの子天才ですか?」

「天才という言葉では全然足りないんですが、それよりアレン君が今——」

「やっぱり! ロダン、アレンは天才だって!」

「……そうか。俺とは違うな……」

ロダンは虚ろな目でアレンからロカに視線を移して言った。

「……夕飯、食べていきますか?」

ロカは頷いた。テレシアの飯は美味いのだ。

アレンの凝視は無視された。

(惜しいとこまで行ったな。今度は「挑発」と組み合わせてみよう)


問題は別のところで深刻さを増していた。

ボア狩りの打ち上げの席で、村一番の無神経男ジャイがロダンの隣に座った。

「おいロダン!お前とこのアレン、ありゃホントにお前の子か? 黒目黒髪って珍しいよなあ」

酔ったその口から出た言葉にロダンは凍りついた。それが、ロダンがこれまで見ないフリをしてきた自分自身の気持ちそのものだったからだ。

ロダンの中で封印されていた問いが、音を立てて溢れ出してきた。

(テレシアはそんな女じゃない。そもそも黒目黒髪の奴なんてこの村にはいない。いや、待て、通りすがりの旅人? 盗賊ってことも? 俺がボア狩りで留守にしてる間に……)

翌朝、アレンはロダンを待ち構えていた。

召喚スキルの取得には、実際に何かを呼び寄せる訓練が必要だ。まずは日頃からなぜか自分を遠巻きに見ているロダンを引き寄せてみよう。

ロダンが目の前を通りかかった瞬間、アレンはこっちへ来いと念じ始めた。

「ンー!」

ロダンは立ち止まった。ひきつった目でアレンを見た。

「黒い髪……、黒い瞳……」

アレンは全力でロダンに向かって腕を伸ばす。

「ンー!ンーッ!」

(……この髪、この目!いったい誰の?)

ロダンは怯えたように足をひっこめ、逃げるように去っていった。

アレンの動作は無視された。

(うーん、パラメータの調整が必要かなぁ。知力じゃないよな。器用さ、かな?)


半年後、ロカが血相を変えてロダンを訪ねてきた。

「ロダンさん、大変です。アレン君がとんでもないことになっています。このままいくと——」

ロダンは縁側に座るアレンを見た。何か真剣な目をしながらこっちに腕を伸ばしてくる。

(器用さの向上には手先の反復運動が有効なはずだ)

指を不気味にクネクネと動かしはじめたアレンから急いで目を逸らし、ロダンは言った。

「……なあロカ。黒目黒髪って、どこ出身の人間に多いと思う」

「さ、さあ?というかそれより——」

「この辺りを通る旅商人で、黒髪のやつを見たことはないか」

「いや、ないです。それよりアレン君の話を——」

「盗賊! 盗賊が黒目ってことも、無い話じゃないよな」

「何の話ですか、一体? だからアレン君が大変——」

テレシアが縁側から声をかけた。

「ロカさん、今日も夕飯食べてく? アレンったら、さっきからずっと腕を伸ばして何か呼ぼうとしてるみたいでかわいいのよ」

ロカはアレンを見た。アレンもロカを見た。期待を込めて腕を伸ばす。

「いただきます」テレシアに向きなおってロカは言った。アレン君のことは、また今度にしよう。

アレンはやっぱり無視された。

(母さんの飯は美味いからな、しょうがないか。待てよ、飯の力で呼び寄せる?そうか、召喚にはエサが要るんだ!これは重要な設定だぞ)

誰からも無視される「ヘルモード」の中で、アレンの孤独な挑戦は続く。いつか必ず、最初の召喚を成功させるだろう。「はじまりの召喚士」への道は、始まったばかりだ!

 

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