東京下町に、神社という馴染みが有りながらも内情をあまりよく知らない舞台を据え、召喚エルフという特殊な演者を配し、その上で違和感なく、ほんわかしたりしんみりしたりの日常を描く逸品。


「江戸前エルフ」の評価

見てもらいたい度:⛩️⛩️⛩️⛩️➖

 

オススメ・ポイント

このダメエルフが、不思議と日本的な神のイメージにしっくりとくる

召喚された不老不死のエルフが、東京下町の神社のご神体として祀られている。実に神話っぽい魅力ある設定です。

その神様がだらしなかったりするのが、これまた日本やギリシャの神話に出てくる神様像のようで、私にはとてもしっくり来ました。代々受け継がれてきた伝統ある神秘的な神事の由来が、エルフのしょうもないわがままが発端だったなんて、ほんとに神話のよう。

そんな神様を、身近だけど一線引いた遠い存在として、見てないふりして見守ってたり応援してたりする氏子のみなさんの描写が、巫女とのわちゃわちゃしたやり取りだけでは感じられない、エルフの「高耳様」というご神体としての立ち位置をよく見せてくれました。

 

微笑ましい気分になる登場キャラ


エルダ様の、何百歳にもなって子供っぽいところが微笑ましい、というかニヤニヤしてしまいます。

小糸ちゃんのサバサバした屈託のない明るさや、小柚子ちゃんの可愛いのにしっかり者なところも魅力的。

この小糸、小柚子姉妹の日常も微笑ましいし、エルダ様とその巫女である小糸の関係も微笑ましい。氏子さんたちやスカイツリーの職員さんたちの様子もまた微笑ましく、何もかもが微笑ましいアニメです。

 

江戸トリビアが自然と挿入される

エルダ様が時たま話される江戸時代のエピソード、会話の流れに乗っていて、取って付けた感じがなく、自然と耳に入ってきます。しかも内容が面白い。

明治、大正、昭和の話が出てこないのは、雰囲気壊れてしまうからでしょうか?江戸時代の長さからするとしょうがないのかな?

 

かすかに感じる切なさが味

ほんわかほのぼのストーリーのはずなのに、不老不死で街の変遷や人の移り変わりをずっと見てきた背景が垣間見えて、エルダ様のふとした表情やセリフに切なさが感じられます

長命であるがゆえの愛するものが先に去っていく悲しさが、表に出してストレートに表現されないことで、こちらの想像が余計に強く喚起されます

笑える部分は前フリなのかなとも思えます。

 

私の隅田川のイメージを変えてくれた

私がぼんやりと感じていた隅田川周辺、無味乾燥な都会の一角という印象が、そこに人々の生き生きとした日常がちゃんと想像できる街へと変わりました。

 

オススメの回

第6話「Stand by Me」です。

Aパートはエルダ様の「構ってちゃん」ぷりが可愛い笑えるエピソード、Bパートは笑えるところもありながら、エルダ様が過ごしてきた時間、小糸と過ごす時間、人は入れない神域に、この作品ならではの切なさが感じられる回でした。

 

「江戸前エルフ」の感想 ※ネタバレあります

第6話「Stand by Me」 での一番のお薦めは、Bパートで描かれる東京スカイツリー上のシーンです。

エルダ様が語る不死山の話、それを受けての小糸『私はこの顔があまり好きじゃない』というセリフ。神域を前にして『この先に私は行けないんだ、最後までエルダと歩くことは出来ないんだ』、そんな小糸の手を引き『もう少し一緒に居てくれよ』と微笑むエルダ様。

この一連のシーンで、不老不死のエルフと短寿命の人間の関係、今まで多くの別れを経験してきたであろうエルダ様の胸の内を想像し、いつものほのぼのとした楽しいお話とのコントラストでより一層強い印象を残す、私がこのアニメに感じる「良さ」が凝縮されているシーンでした。




第7話「姉妹の気持ち」

いつもぼんやりして見えるエルダ様だけど、他人の気持ちがよくわかるところがあり、それが故に人に情が移る → でも別れが来る → ツライ、だから引きこもる、という側面もあるのかなと思いました。




エンディングの実写との融合が、写真にただアニメキャラを重ねてみましたというものではなく、アニメに登場するアイテムを実物として再現したり、アニメキャラを配した上で 3Dのカメラワークで動かして見せたりと、私はあまり見たことのない斬新な手法だと感じました。

「たまにするその顔、好きじゃなかった」と、小糸のセリフのような歌詞の曲も好きです。




第12話「これが私のご祭神」 B パートが全く最終回らしくなくてちょっと拍子抜けしましたが、そこにこのアニメの「らしさ」も感じられました。

 

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