アニメ「瑠璃の宝石」のレビュー
「瑠璃の宝石」の評価と感想
わがまま甘えん坊の女子高生が、大人なお姉さんに出会って変わっていく。
この出会いこそが「宝石」。
「瑠璃の宝石」の評価
【見てもらいたい度:💎💎💎💎💎(5/5)】
満点です!ぜひ、観ていただきたい!!
オススメ・ポイント
- 地学うんちくや科学的な理屈の話がダルくない
- 例えば 第4話「砂を繙く」 での正しい川砂調査のやり方とその理由なんて、かなり地味な話のはずなのに、退屈せずロマンさえ感じられる。
- 作画が良い
- セリフ無しでも、表情や仕草でキャラの気持ちが伝わってくる。
- 石も木も水も空も川も海も山も、大げさに言うと『あぁ、世界はこんなにも美しかったのか!』と感じさせてくれる。
- キャラそれぞれの瞳がもうまるっきり宝石なのよ。
- OP/ED が曲も絵も素晴らしくて、毎回同じ映像と音なのに毎回楽しみ
- 画面から制作陣の熱量を感じる
主人公が毎度すごいものを探し当てる(光の住処へ辿り着く)けれど、そこで「そんな都合のいいこと…」とシラけたりせず、そこに至る運命や必然を感じました。SF(サイエンス・ファンタジー)としてしっかり成立しており、そこに鉱物や自然の悠久のロマンと人の営みのぬくもりが加わって、奥深さを感じさせてくれる物語になっています。
オススメの回
第6話「その青をみつめて」 です。
主人公の責任感ある行動。自分のミスを隠さず、しっかり再検証して間違いを認める態度と、いつの間にか研究者としての基礎と心構えが出来ている点に感心し、主人公の成長に嬉しくなった回でした。
同様に、 第8話「黄昏色のエレジー」 もお勧めです。
同じ石好きの友人 "硝子ちゃん" が無くしてしまった石の答え探しに一生懸命になる主人公の、友達思いの優しい心に加えて、研究者的 "しつこさ" や "諦めの悪さ" が感じられる回です。
研究者といえば、第11話「サファイアのゆりかご」 での、鋭い観察眼で問いを立て、推理と物証を元に真理を掴もうとする主人公の姿はまさに研究者です。皆を引っぱっていく頼もしさも感じられ、少し大人になったように見えました。
第1話「はじめての鉱物採集」 ではキラキラ・アクセサリーのために赤ちゃんみたいな足で地団駄踏みながらお小遣いねだっていたのに、成長しましたね。その姿に嬉しくなりました。
成長といえば、主人公の最初の成長を感じた 第2話「金色の価値」 もお勧めです。
金=お金、という価値観しかなかった主人公が、いろいろなことを知り学ぶうちに、"金"に金額とは違う価値を見出すようになっていく様子が、観ていて清々しく感じられました。
【#瑠璃の宝石】第2話「女子高生の目醒め」
— こしたゆい 💙💛 (@cositayui) July 18, 2025
百万円、一千万円ではなく、百万年、一千万年に価値を見出せるようになった笑顔。😊 https://t.co/uu2ItcZVwx pic.twitter.com/8vz4GV3XWb
演出の素晴らしさでは 第12話「想い出は石とノイズと」 も外せませんし、 第9話「190万トンのタイムカプセル」 は話の流れが見事で、映画を見ているかのようでした。
人の想いや歴史という意味で 第10話「ワンセンテンスの廃線路」 もドラマチックで素敵です。
つまり、全話おすすめです!
残念ポイント
この素晴らしいアニメにも終わりがあり、永遠に続くわけではなかったことです。
そのほか「瑠璃の宝石」で感じたこと
主役がしっかり主役だった
第1話「はじめての鉱物採集」 時点での主人公は少しわがままで自分勝手なように見えて、感情移入しづらい印象でした。
それが、 第2話「金色の価値」 で 100万円とか 1000万円ではなく、100万年、1000万年という時間の経過や積み重ねに価値を感じるようになったことに好感を覚え、ラストシーンの笑顔にすっかり魅了されました。
その後 第4話「砂を繙く」 では、どうやら主人公けっこう頭いいことに気づき、 第8話「黄昏色のエレジー」 のセリフ「瀬戸さんが見つけた石に答えを出してあげたい」「これは絶対、瀬戸さんが採ったほうがいい!」で、人として尊敬できるまでになりました。
声の演技も魅力的です。
第8話「黄昏色のエレジー」ラストの「瑠璃ちゃん、でいいんだよ」とか、 第9話「190万トンのタイムカプセル」 での微笑ましい「見本にひとつー、取ったげるねぇー」でもう完全に虜になりました。
ミニアニメ『も~っと!鉱物生活のススメ!』第9回「石英の様々な呼び方」最後の涙声も可愛いです。
主人公はわがままで甘えん坊なところがあるけれど、根が素直だから、良い人と付き合っていれば良い方向に成長する、きっと磨けば光る原石みたいな子なのでしょう。
凪お姉さんに出会えて良かったね。凪さんとの出会い、伊万里さんとの出会い、硝子ちゃんとの出会い、この出会いこそ「瑠璃の宝石」なのでしょう。
キャラの配置バランス
主人公は凪さんに、硝子ちゃんは伊万里さんにそれぞれ親愛の情を抱く点や、「主人公 凪さん」チームと「硝子ちゃん 伊万里さん」チームの性格の違いと相性が良いバランスだと思います。
序盤は主人公のお子ちゃま感を脇役のステキお姉さんでフォロー、視聴者が主人公を好きになったころにお姉さんの出番を減らして主人公に重点的にフォーカスを当てていくという、エピソードが進む中でのキャラ配置も巧いと思いました。
第10話「ワンセンテンスの廃線路」 の最後で、伊万里さんが今回の発見を嬉しそうに凪さんに話すシーンとか、第3話「残された恒星」 や 第9話「190万トンのタイムカプセル」 で凪さんの世話を焼く伊万里さんの姿など、脇役である凪さんと伊万里さんの関係性もしっかり描かれています。
荒砥観音
凪さんのあの包容力、おおらかさ、主人公を優しく諭す姿、すでに旦那さんがいて、子育て経験があってもおかしくないと感じました。
大学でずっと研究しててアルバイトとかしてる風でもなく、その上いい車に乗っていたり、第9話「190万トンのタイムカプセル」 ではどうやら皆に学食で奢っているらしいところを見ると、砂金や珍しい鉱物を売って経済的余裕を得ているのかな? 第11話「サファイアのゆりかご」 にて学会で渡米したのも、主な目的は鉱物の仕入れだった…。なんて、まさかね!
旦那様が優しくて高給取りな方なのかも(男性諸氏の夢を壊してゴメン!)。
冗談はさておき、第8話「黄昏色のエレジー」 で主人公に、徒労に終わるかもしれない、「だから辞めておけ」じゃなくて「それでもやってみるか?」と言える凪さんは、素敵な大人だなと思います。
体当りで思い切り飛び込んで行っても、優しく、しっかりと受けとめてくれる。そんな女性だと感じました。まるで観音様です。荒砥観音、どこかにありそうですね。
【#瑠璃の宝石】第9話 無頓着美人「服は機能性」
— こしたゆい 💙💛 (@cositayui) September 6, 2025
1⃣『(機能的で)いい着心地だな』
2⃣『動きやすくて、いいな(つまり、実用的だ)』
3⃣『これも好きだな(機能的で)』
4⃣『なるほど、(実用性は)こんな感じか』
😅 https://t.co/JeyZgYV6HY pic.twitter.com/Xu5H3NVqrE
それにしても、第9話「190万トンのタイムカプセル」 のファッションショーでの溜息が出るような素敵な姿、かと思えば 第3話「残された恒星」 では片付け苦手というちょっとした隙も見せて、これでモテないわけないでしょう。
…やはり、すでに旦那さんが……。
そうだとしても、凪さんの素晴らしさは少しも色褪せることはありませんね。
伊万里さんの論理破綻
第9話「190万トンのタイムカプセル」 での凪さんファッションショーは伊万里さんの発案で、理由は『(凪さんは)オシャレすればもっと魅力的になる』はずだから。でも、メイド姿のまま学食に行く凪さんを止めようとした主人公に、伊万里さんは『誰も気にしないと思うよ』と言います。
オシャレさせて「魅力的になった」はずなのに「誰も気にしない」とはこれいかに?
一見矛盾した発言に見えますが、ここに伊万里さんの天然っぽさが表れているようで、印象に残ったシーンでした。
ロマンの地層
伊万里さんお当番回の 第10話「ワンセンテンスの廃線路」 やアニオリ回の 第12話「想い出は石とノイズと」 に見られた、石が物語るある時代の人々のドラマに、自然科学一辺倒ではない奥深さを感じました。
石の何万年スパンの歴史、それと対比させた人間の小さな営みの歴史。それがお互いに重なって、大きく密度の濃いロマンを感じさせてくれるエピソードが多かったと思います。
私の上を通り過ぎていった石たち
子供の頃には私も「いい石」を拾って集めていました。宝石を拾った!と思っていたものが、実はただのお風呂のタイルだと知った時のガッカリ感は、今でもボンヤリと思い出せます。
久しぶりの石拾い
作中の楽しそうな様子に誘われてその頃の気持ちが蘇ったのか、久しぶりに海岸で石拾いをしてみたくなりました。
拾ったのは、軽いから持ち帰るのが楽な「軽石」ばかり。イヤですね、大人になると計算が始まって…。子供の無邪気な心が蘇ったんじゃなかったのかい!
聖地巡礼としての読書体験
アニメを観てから、石に関する本も何冊か読みました。
世界には約4500種類の鉱物があり、そのほぼ半分は日本で見つかるとのこと。日本は鉱物の種類には恵まれているんですね。
この本の最初に紹介されているのがガーネット、次がサファイヤ、その後も石英、メノウ、オパール、砂金に黄鉄鉱、蛍石に菱マンガン鉱と、アニメに登場した鉱物が次々と現われ、まるである種の「聖地巡礼」をしているような気分です。
アニメの「あの石」が本当にこの世界にあるんだ、という不思議な実感が味わえました。
ページをめくってすぐに、パニング皿いっぱいにガーネットがザクザクの写真があり、 第1話「はじめての鉱物採集」 での川底一面がガーネットというシーンを思い出し、ああいう場所も実際あり得るのかも、と思わせてくれます。
こちらは綺麗なというよりちょっと変わった石を集めた図鑑です。
ジンカイトの項には、人工的な産地として凪さんが言及していた「フランクリン鉱山」の名前が出ていました。
地学を学んで何になるの?
地学に限らず、数学に対してでも何に対しても、「これを学んで何になるの?」とか「将来役に立つの?」という言葉をよく耳にします。
分からないでもないですが、「実用性」ばかりが問われるのは少し寂しい気がします。自分の「好き」を無視して、役に立つことしか学ばないのは、人生を余裕の無い、つまらないものにしてしまわないでしょうか。
一見、全く役にも立たないけれど、自分の好きなことに時間や情熱を注げることこそ、人生を豐かにする一番の「宝石」ではないでしょうか。
「瑠璃の宝石」を観て、私はそんなことを思いました。
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