転スラの大賢者

「転生したらスライムだった件」の評価

いまさら説明の必要なんてない大人気作のTVアニメ。
2021年5月時点で、関連書籍を含めたシリーズ累計発行部数が2500万部を突破したというモンスターコンテンツ。

オリジナル作品の小説を元としたアニメ「転生したらスライムだった件」1期、2期と、スピンオフ漫画「転生したらスライムだった件 転スラ日記」のアニメ化がされています。

見てもらいたい度:❤️❤️❤️❤️🤍

オススメ・ポイント

多彩で魅力的なキャラ、喜怒哀楽が全部詰まってるストーリー、矛盾や違和感を感じさせずストーリーに没頭できる緻密な構成が素晴らしいと思います。

オススメの回

化物の悲劇性を描いて驚きと感動を与えてくれた、14話「全てを喰らう者」です。

 

なぜこんなに面白いのか?

「ちょっとあの話もう一回…」と見始めたが最後、ついつい次の話、次の話と結局シリーズ全部見返してしまう面白さがあります。

なんでこんなに面白いのかと考えてみると、まずは多彩で魅力的なキャラクター達が挙げられると思います。

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カッコいいキャラに可愛いキャラ、おバカに天然、嫌な奴、いい奴、頼もしい奴、実に様々なキャラクターがいますが、それぞれの個性の設定がしっかりしていて、ストーリーの都合とかでブレたりしない。
おマヌだったり嫌な奴だったりしても「こいつイイ所あるじゃん!」と思える描写があったり、胸糞の悪い敵は徹底して胸糞悪いままだったりとか、キャラ付けがストーリーにしっかり活きてるところが実に巧い。 主要なキャラにはそれぞれの物語があり、それがそのキャラの性格や行動に結びついているところもしっかり作られているなと感じます。

それら多彩なキャラが織りなすストーリーもスケールが大きく、かつ緻密です。
様々な国、種族、個人(個魔物?)、いろんな関係性が複雑に絡み合って、どんどんと世界が拡がっていきます。

それぞれの関係性、個人を掘ろうと思えばもっともっと深く掘れそうで、ネタやアイディアにまだまだ余裕があるようにさえ感じます。

これだけのスケールで、登場キャラが感じているであろう気持ち、行動、反応に整合が取れていて矛盾を感じることがない。 「ん?あれ?なんで?」と感じるようなところが無く、完全に物語に没入できるところが本当にスゴイと思います。

リムルがスライムだし元異世界人だしで、この世界や魔物のことを何も知らないという設定も効いていて、周りのキャラによる説明が自然で説明臭くなく違和感を感じさせません。

リムルの圧倒的強さによるカタルシス、和みキャラによるほのぼの感、ギャグ班のボケとリムルのツッコミ、悲劇性を含んだエピソードなど、喜怒哀楽が全部詰まってるところも奥行きのある面白さを出していると思います。

 

 

アニメを観たら印象に残った点

1期

この1期だけで3期分ぐらいの話が詰め込まれてる気がします。


異世界転生からのゴブリン村興し、周辺国との関係、そして8話「受け継がれる想い」でのシズさん。 ここが一つのクライマックスだったと思います。
人の姿になったリムルが振り向いたときに頬に伝う涙にはグッと来ました。

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シズさんのエピソードはもっと引っ張ってもっと深堀りしてほしかったけど、そうなると4、5期分ぐらいになっちゃいそう。

そして、鬼人と一緒に豚討伐。
14話「全てを喰らう者」でオークの王ゲルドがオークロードとなったいきさつ、飢えの物語を知り、憎むべきただの化物だと思っていたオークロードの悲劇性があらわになり、エピソードの深みがぐんと増します。
オークディザスターの最後『飢えは今満たされた』には号泣です。 その後の 15話「ジュラの森大同盟」でのオークたちの処遇にまた号泣、ベニマルのオークへの言葉でさらに号泣でした。

その後、天真爛漫魔王ミリムの登場、でかい空飛ぶ怪物との戦い。 ここでリムルより強い存在、他の周辺国など世界がまた拡がりました。

最後にはシズさんの教え子たちとのエピソード。 主人公は同じでも全く別の物語のようになってきます。
シズさんの教え子のお話しはこれで終わりじゃないですよね? 特にクロエちゃんは特別な存在に憑依されたみたいだし、リムルからシズさんの仮面を受け継いでたし、今後のキーパーソンになるように思えます。 この後どう展開していくのか楽しみです。

ところで、魔物はリムルに名付けしてもらうと進化し、どんどん人間っぽい外見になっていくんですね。 てことは、人間は魔物の進化の果て? にしては弱いけど?

 

2期

「転スラ日記」を挟んで1部、2部の2部構成での放送。

 

1部

初見の方向けなのか、1部の前半は1期の復習という感じで正直ちょっと退屈でした。 6話「災厄の前奏曲」でのファルムス王国の転生者の騒動、7話「動き出す麗人」でのヒナタとの対決からいよいよ話が動き出します。

ファルムス王国の3人の転生者はなんか胸くそ悪いだけのキャラで終わってしまった。 苦労知らずで周りにちやほやされて楽して生きてると底の浅い人間になるぞということですね、きっと。
シズさんの教え子たちにはああなってほしくないものです。

魔王になるためにファルムス軍を皆殺しにするシーンには全能感を感じます。 蘇ったシオンとの再会はずいぶんあっさりしてるなと思いました。

ヒナタが今後どう絡むのか、リムルへの誤解はどうなるのか楽しみです。 あとクフフフ変態原初の悪魔ディアブロの活躍も。

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しかし、人間大量に殺して魔王になれるんなら、そこいらじゅうで大虐殺だらけになるのでは?

 

2部

1部のときに期待していたヒナタやディアブロの活躍が見られず残念です。会議(人魔会談)に始まり、会議(ワルプルギス)に終わった第2部でした。

第1部の前半も退屈な進行でしたが、2部でもほぼ4話にわたっての会議回という刺激に乏しい展開で始まります。これだけ念入りに会議を見せるからには、その後につながる重要なエピソードがあるんだろうと思って見ていましたが、特にそれらしいこともなく拍子抜けでした。

その後の戦闘回は刺激的ではあるものの、少し物足りなさも感じます。
クレイマン軍本体との戦いはほぼ主要人物同士の局所的な戦闘の描写のみ、シュナたちの城攻めでは「シュナってとっても強いんだぞ」をさらりと軽く見せるのみ、リムルたちの加勢に加わったベレッタは、あれだけギィを説得してなんとか戦闘に参加できたにもかかわらず、戦いのシーンは描かれず、クレイマンにオラオラしたときのシオンは楽しそうで、クレイマンの策略のせいで一回死ぬことになった「怒り」「恨み」は特に感じられることもありませんでした。もう少しじっくりと、もっと深く、もっと奥まで見たかったなと思いました。

あのワクワクする戦闘回が物足りないだなんて、これは贅沢な感想でしょうか。シリーズも長くなってくると、期待値の基準が上がってしまうのかもしれませんね。その期待値を下げるために、会議回の退屈さは必要なものなのかもしれません。

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転スラ日記

描く日常の場面、登場人物が多すぎてなんかもったいないというか贅沢というか。 個人的には謎に包まれたソウエイの日常だけを追ってほしいです。 いっそもうリムルは出てこなくても…。

お盆回の6日記「うつろいかわる」で、宴で楽しそうなリムルを見つめるシズさんの表情が実によかったです。
シズさんを見る度に、スピンオフでシズさん主人公の物語が欲しいなと思います。

ゲルドが子供に好かれるのもいいですね。 ゲルドの過去と、いつも懸命に働く気持ちがなんだか報われたような感じがして、他人事ながら嬉しいです。


 

コンテンツの拡がり

もうとにかくコンテンツが巨大すぎて圧倒されます。

まずWikipediaの記載量からしてものすごい。 印刷しようとすると80ページ以上あります。 目次だけで何スクロール要るのこれ?

公式サイトが”アニメ公式”じゃなくてポータルサイトになってるのもすごい。
アニメに小説にゲームに漫画、グッズにイベントと盛り沢山! もう「転スラ」という名の一つのジャンルですね。
メディアとしてまだ映画が無いようですが、この先一体何本出てくるのか…

漫画は本編以外にそれぞれ違う作家さんによるスピンオフがあり、2021年5月現在で以下の6作品が出版されています。

最後の「島耕作だった件」って、その方式なら無限に行けますね。

これだけの人気作、他業種も放っておかないということで、コラボも多数発表されています。

【日清どん兵衛とのコラボ】

日清さん、シズさんで流した私の涙返して。

【SEIKO コラボウオッチ】


【UHA 味覚糖】

魔王ソーダ味ってどういう味?

コグミは形がいろんなリムルになってて凝ってましたね。

 

ジャパニーズ・ドリームの体現

一人の作家のWeb小説から始まり、ここまで成長した「転スラ」。 成功の夢がありますね。

アニメでは時間的にも話数的にも物語全てを描き尽くせないけど、だからこそ余白というか余韻が残って想像が膨らむし、アニメを見ていない時間でさえ物語に没入できるのかも。 それが人気の秘密なのかもしれません。

このアニメは一体何期まで続くんでしょう。 ずーっと最後まで、スピンオフも含めて全部見たい作品です。

 

参考リンク